『ヨナ抜き音階と日本の音楽教育06』

教育のスペシャリストとして

伊沢修二自身のことや彼の生きた時代背景を考慮すれば、私のように西洋音楽の理論は多少理解している一方で日本音楽に関しては全く精通していない人間でも呂音階つまりヨナ抜き音階と同じ『ドレミソラ』に行きつくのは簡単なのである。もっと言えば、私自身、日本の伝統音楽を理解できていないからこそ、その答えの出し方に納得できると言える。

何故なら後述するが、呂音階は日本人に合わないとされ日本音楽の歴史の中で使われなくなった音階である。その為、伊沢が行き着いたこの答えは後に専門家から批判を受けることになるのだ。

最初に述べたように、伊沢自身は幼いころから日本の音楽を厳しい鍛錬で習得していたわけではない。日本音楽の専門家ではない教育のスペシャリストにとって『勇壮活発な国民の育成』よりも日本音楽への拘りが勝ることは無かったのだろうと容易に想像できる。


呂音階を後押しするもの

伊沢修二が雅楽の呂音階に着目する中でその意思を後押しする事柄がいくつもある。

①日本の雅楽は千数百年前から現在まで受け継がれる非常に歴史の深い音楽だ。その雅楽は中国から伝わった音楽の影響を受け国内で完成されたと言われる。その中国の音楽の起源はインドにあり、西洋の音楽もまたギリシャを経由しインドから伝わったということ。つまり中国と西洋の音楽は根底で繋がっている

②中国の音律の求め方である三分損益とギリシャのピタゴラスが考案した音律を求める方法は全く同じであり、その方法で12音を求めた場合ドレミソラは最初に出てくる5音であること。

③三分損益で12音を求める場合、呂音階と律音階の唯一の違いで律音階にだけ使われているファの音は一番最後に算出されること。

④呂音階は日本の音律の数え方である順八逆六にて求められるが、ファを算出するにはそれを逆にして順六で音を取らなければならない。さらにそのまま順六逆八の音を取ると律の七音が出来上がるが、これはミがフラットしていて西洋風にいえば短音階であること。

⑤当時の米国はまだ独自の音楽教育が確立されておらず(教育課程に音楽が採用されたのは1838年)、音楽の教材としてスコットランドやアイルランドの民謡が移民と共に輸入され使われていた。この両国はドレミファソラシドからファとシが抜けた音階が多く使われている。つまり呂音階と同じ構成だ。その米国で音楽教育の専門家だったメーソンは伊沢修二に最も影響を与えた人物の一人なのは間違いなく、そのメーソンから呂音階の使用にあたってアドバイスあるいは賛同を得ていたであろうこと。


①と④に関しては、申報書の中でも解説されているが特に④で律の七音が西洋的に短調となる結果は律音階を軽視した最大の要因と言える。

②と③に関しては、ギリシャ・中国・日本の三国での音律の求め方で、どれもドレミソラが最初に算出される事実は、その音の重要性を誇示しているように見える。逆に③にあるように、それらの音律の求め方でファが一番最後に出ることがファを軽視した要因の1つと言える。

⑤に関しては、音楽取調掛による研究の集大成ともいえる『小学唱歌集』にスコットランドまたはアイルランドの民謡を元に日本語歌詞が付けられた曲が多数掲載されていることからも米国の初期音楽教育の影響を受けているのが分かる。例えば有名な『蛍の光』は小学唱歌集の初篇に登場するが(掲載時は『蛍』という題名であった)、この曲も元はスコットランド民謡『オールド・ラング・サイン』のメロディでアメリカでも普及した曲だ。

整合性はともかくとして、伊沢修二は、日本と西洋の音楽に違いは無いという結論を突破口に、日本国民には長調での音楽教育が必要でそれには呂音階と同じ構成の音階を使うことが望ましいというゴールにたどり着いている。申報書は、その結果の正当性を説明するために書かれたとも言える。

次の記事へ⇒(七)集大成『小学唱歌集』に見られる拘り

【ヨナ抜き音階と日本の音楽教育 全12記事】
(一)近代教育の開拓者 伊沢修二
(二)近代音楽教育が目指したゴール
(三)伊沢修二の実験と理屈
(四)長調への拘りと体操教育での経験
(五)たどり着いた答え『呂音階』
(六)呂音階の推進を後押しするもの
(七)集大成『小学唱歌集』に見られる拘り
(八)伊沢修二に対する批判と民謡音階
(九)伊沢修二とヨナ抜き音階が残したもの
(十)童謡『赤とんぼ』の解析
(十一)『パプリカ』の解析
(十二)そして、よなおしギターへ


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