『ヨナ抜き音階と日本の音楽教育05』

社会の大きな渦の中で

体操教育での医学的観点での取り組みも、音楽教育での長調への拘りもその根底にあるのは『欧米をお手本として近代国家の構成員として相応しい心体ともに健全で勇壮活発な国民を育てる』という理念だ。そもそも唱歌に対しても、体格を正し肺臓を強くし心豊かにするための手段としての位置づけをしている。

この近代国家としての国民育成は当時の政府あるいは社会全体の大きな流れといえるが、流れというよりは強大な渦と言った方がよいかもしれない。このムーブは次第に『他国に負けない強い国をつくる』のような富強主義がより強くなり、さらには帝国主義へとイデオロギーが突き進んでいく。

後に、伊沢修二が体操や音楽で目指した教育の効果が予見通り抜群に発揮されたことで、皮肉にも彼が必ずしも望んではいなかったゴールを目指してしまった。当時の、戦争へ向かう強大な渦は誰にも抗うことが出来なかったのは歴史が証明している。

伊沢修二が脳出血により大正6年(1917年)に没したわずか1年後、『赤い鳥』が創刊される。この文芸雑誌は子供たちに質の高い文学に触れてもらいたいと当時の一流作家たちが集結し創作活動をしたいわゆる『童謡運動』から生まれた。創刊時は詩にメロディは付いていなかったが、翌年から楽譜もつけられ盛大に普及し、伊沢修二たちが尽力し生み出した文部省唱歌とは対照的なジャンルとして『童謡』を確立していく。

童謡運動は、学校において教育的で面白味の無い教材が無条件に子供たちに教えられていることへの危機感が始まりの要因のひとつと言われるが、私などはその意図が、国の教育によるイデオロギーの押し付けに対する反発にあると思っていた。ところが、昭和初期のいわゆる『校歌ブーム』では、『あめふり』『ゆりかごのうた』を作詞した北原白秋、『かなりや』を作詞した西條八十、『赤とんぼ』を作曲した山田耕筰など童謡運動の主力的なメンバーが校歌を爆発的に作っている。

ある意味で、校歌は唱歌と同じ、もっといえば唱歌よりも子供の集団をある一方向に向かせるのに適した歌とも言えるのは甲子園での校歌斉唱を見れば現在でも納得できる。現に、校歌作家の黄金コンビである山田耕筰と北原白秋の手による校歌には、天皇中心主義や皇国史観の色濃いものも存在する。つまり、彼らも強大な渦の中で自らの才能を発揮していったのである。


たどり着いた答え『呂音階』

伊沢修二の生い立ちや人格、彼が生きた時代の背景を知ることで、彼が『ヨナ抜き音階』を学校の音楽教育の柱と位置づけた理由が明白となる。

もちろん大前提として彼は日本を愛していただろうし、この国をより良くしたいと思っていたのは間違いない。その為、音楽取調掛での当初の理念『日本と西洋の音楽を折衷する』という目標は出来れば果たしたかったであろうし、すでにそう宣言してしまっている。

何としても日本に伝わる音楽の中で近代国家の教育としてふさわしい材料を見つけたい。

武士の家の子であった自分が自然と身に付けた音楽では西洋のそれに全く歯が立たなかった。そうなれば当然、庶民の音楽も高が知れている。残るは貴族層が嗜んだ雅楽。中国に源流を持つ雅楽を材料にすれば欧米に負けない国楽の基礎が作れるかもしれない。雅楽で使われる音階は2つ、『呂音階』と『律音階』。この2つの音階の内、明確に長調と分かるのは『呂音階』

つまりドレミソラである。(下図参照)

呂音階と律音階-1


次の記事へ⇒(六)呂音階の推進を後押しするもの

【ヨナ抜き音階と日本の音楽教育 全12記事】
(一)近代教育の開拓者 伊沢修二
(二)近代音楽教育が目指したゴール
(三)伊沢修二の実験と理屈
(四)長調への拘りと体操教育での経験
(五)たどり着いた答え『呂音階』
(六)呂音階の推進を後押しするもの
(七)集大成『小学唱歌集』に見られる拘り
(八)伊沢修二に対する批判と民謡音階
(九)伊沢修二とヨナ抜き音階が残したもの
(十)童謡『赤とんぼ』の解析
(十一)『パプリカ』の解析
(十二)そして、よなおしギターへ


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