『ヨナ抜き音階と日本の音楽教育04』

伊沢修二が最も拘ったもの

伊沢修二が取調掛で行ったこれらの研究において、強引にでも導き出したかった日本と西洋の音楽は同じという結論は、伊沢自身がもっとも拘った施策を実行するためには絶対に必要な建前だった。

伊沢が最も拘ったのは『長調(メジャー)』だ。

伊沢は西洋の歌に長調が多いことに着目し、それが国を発展させる要因になっていると考えたのだ。


長調と短調の感覚の違い

私自身、長調と短調の違いを説明する時「長調の曲は明るい雰囲気がし、逆に短調の曲は暗い雰囲気がする」と言う。これは決して間違いではないのだけど、あくまでもこの感覚は西洋的な感覚だ。

伊沢自身も箏のチューニングに関するくだりで「本邦の音楽には短音階を用いることが多い」と述べている通り、日本人は短調の方がしっくりくる場合が多い。ただそれは暗いとか悲しいとかの表現として使うのではなく、情緒的な心情を表現したり時には短調で美しさや楽しさすらも表現し、短調により豊かな感覚を持つ。

例えば、日本を代表する歌『さくらさくら』は、西洋的にいえば短調で暗い曲だが、あの歌を聞いて暗い気分になり悲しくなる日本人はほとんどいないだろう。もっと新しい歌で『うれしいひな祭り』という歌があるが、こちらも短調であるにもかかわらず題名に『うれしい』と付けられ、ひな祭りの楽しさを歌っている。


長調に拘る理由

そういった日本人と短調との相性の良さを恐らくは理解していたであろう伊沢修二は、だからこそ「長音階の楽曲は勇壮活発であるのに反し短調の楽曲は柔軟憂鬱で哀情極まりない」と短調をスッパリと一蹴し、さらに「子供に長音階の曲を聴かせて教育すれば勇壮活発の精神が育まれ有徳健全な心身を養うが、短音階の曲で教育すれば柔軟憂鬱な性格となり無力多病な心身となる」とまで言っている。

ここまで短調を忌み嫌い蔑み、他方で長調を絶賛するのは、当時の社会の大きな流れも関係しているのだろう。

明治政府による大改革の目的は、日本を世界で通用する大国にすることであり、そのために教育に力を入れ勇壮活発の精神と有徳健全な心身をもつ国民を育てることだ。その使命を背負った伊沢自身、諸外国に付いての学びや留学の経験により痛感した日本とそれらの国のあまりの文化の差にとてつもない危機感を持っていたことは容易に想像できる。

そうなれば、一端これまでの日本の文化を否定するところから始めなければならないと決断をしたとしても不思議ではない。

音楽が子供たちに絶大な影響を与えることを知っていた伊沢が、日本の目指す大国の音楽が日本とは反対に長音階ばかりであることに着目し、我が国の子供たちにも長調の歌を習わせれば大国としての礎が出来ると長調に活路を見出したと言える。

長調短調というのはあくまでも西洋の音楽理論だ。もし日本に長調の歌を導入するのであれば、当然西洋の理論をそのまま取り入れなければならない。ただそれでは、始めに掲げた『日本と西洋の音楽を折衷する』という大義名分が守られないから、どうしても日本と西洋の音楽は同じであるという結論が必要なのだ。


体操教育と音楽教育の関係

今では音楽教育での功績が最もクローズアップされている伊沢修二だが、そもそもは教育者を育てる師範教育あるいは教育全般のシステム作りがその根底にある。

音楽教育の直前には体操教育の確立にも取り組み、さらに各教科書の整備と安定した供給にも尽力した。その他、盲唖教育、台湾での国家教育実践まで、全ての近代教育の礎を作ったと言ってもいい。さながら各教育のスタートアップは伊沢に任せれば万事上手くいくという具合の起用のされ方だったようだ。

音楽教育のスタートアップの直前に体操教育に携わっていたことは、長調への拘りをより強いものにした可能性が高い。

文部省が体操教育の必要性を感じその研究のため明治11年に設立した『体操伝習所』の主幹に抜擢された伊沢は、そこでも早々に取り組みの構想を提出している。その中で「明治維新以降武芸は衰退し、壮年層は勉強ばかりで体力が全く無い」と嘆き、その遺憾を原動力に体操教育でも相当の功績を残している。例えば、握力や胸囲、鉄アレイなどの言葉を考えだしたり、今では当たり前に行われているスポーツテストの原型も考案した。

ここで伊沢は単純な鍛練による体力作りではなく、欧米を手本とした理屈にかなった医学的、科学的な観点での体育を目指している。その目的はやはり心体ともに健全で勇壮活発な国民を育てることにあった。

体操伝習所主幹としてはわずか1年ほどの任期にもかかわらずとんでもなく偉大な功績を残し、辞任後は音楽取調掛へ着任する。

次の記事へ⇒(五)たどり着いた答え『呂音階』

【ヨナ抜き音階と日本の音楽教育 全12記事】
(一)近代教育の開拓者 伊沢修二
(二)近代音楽教育が目指したゴール
(三)伊沢修二の実験と理屈
(四)長調への拘りと体操教育での経験
(五)たどり着いた答え『呂音階』
(六)呂音階の推進を後押しするもの
(七)集大成『小学唱歌集』に見られる拘り
(八)伊沢修二に対する批判と民謡音階
(九)伊沢修二とヨナ抜き音階が残したもの
(十)童謡『赤とんぼ』の解析
(十一)『パプリカ』の解析
(十二)そして、よなおしギターへ


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