『ヨナ抜き音階と日本の音楽教育03』

音楽取調掛での実験

「東西二洋の音楽を折衷する」から始まる『音楽取調成績申報書』には、その目的に反し伊沢修二が日本の音楽と西洋の音楽を同じものだとする根拠がたくさん書かれている。

例えば、西洋側代表の音楽教師メーソンに日本の音楽を聴かせ、また反対に、日本の著名な演奏家に西洋の音楽や西洋楽器の代表ピアノの音を聴かせ、どちらからも「両者はほとんど同じである」という感想を引き出している。また、そういった日本音楽の大家ほど西洋音楽の習得が早いことにも注目している。

さらに、伊沢得意の科学的な実験も行なっている。

日本で最も広く親しまれている楽器三味線で使われる音律がもし西洋の音律と符合するなら、それは両者の音楽が同じであると言えるだろうと考えた。そこで、西洋の物理学者が唱えた音律(12音)の計算を元に三味線のネックに線を引き(正にフレット)それを利用しチューニングした三味線と、日本の演奏者が耳を頼りにチューニングした三味線を準備し、箏の大家で盲目の山勢松韻にこの楽器で日本の俗曲を弾いてもらったところ、盲目のため線が見えないにも関わらずその指使いがピッタリとフレットに一致したというのである。

そしてもう一つの日本のポピュラーな楽器である箏(こと)については、その平調子というオーソドックスなチューニングにおいて仮に2番目の弦の音を第一音(主音)にすると西洋の短音階と同じように第3音と第6音が半音下がった音階が出来るというのである。(下図参照)

箏の平調子に関する伊沢の考え方


伊沢修二の秀でた才能

これらの実験や理屈を元に、伊沢修二は日本の音律と西洋の音律は少しも違うところが無いと言うことが可能と結論付けている。これらシンプルで分かりやすい実験や理屈は、音楽にそれほど詳しくない人間にとっては納得できるものだっただろう。

伊沢修二の1つ大きな才能は、この『分かりやすさ』にあるように思う。

例えば、申報書は当時の言葉で書かれている為、私のような学の無い人間がその内容を理解するのはかなり骨の折れる仕事である。そんな申報書の中にあって特に分かり難い文章がある。逆に言えば、その他の部分は単純明快で理路整然としていて読みやすく何とか理解がしやすいのだ。実はその特に分かり難い文章は、伊沢とは別人の音楽史の講師が書いたか、あるいはその人物が原稿を作ったと言われている。

伊沢修二は明治以降の日本の教育に多大な功績を残したが、その中でも『難しいことを誰にでも分かりやすくする』という作業に関してはとてつもない才能を持っていたであろうと勝手に想像する。

ただ、分かりやすいことは時として間違ったことにさえも説得力を持たせてしまう危険性がある。


実験の疑問点

伊沢修二が日本と西洋の音楽を同じとするための実験や理屈には、私も少々疑問に思うところがある。

三味線の実験では、ここで西洋式の計算で算出された音律がいわゆる純正律の1種(12音)のようだが、例えば三味線の故郷中国で音律の求め方として使われた三分損益を元に算出した12音と比べてどれぐらいの差があるのだろうか?

仮に三味線の弦の長さを100㎝とした場合、実験で純正律を元にして引いた線の位置と三分損益を元にした音の位置では、その差は大きい所でも1㎝程度だ。線の引き方の正確さや伊沢自身が言うように三味線のチューニングの不安定さを考慮すると、1㎝の差は誤差とも言える。

結局この実験では、どちらも1オクターブを12音に区切った音律という時点でほぼ同じような場所に手が行くように見えるのは当たり前なのである。

もう一つの箏のチューニングに関しての理屈はより強引な部分がある。箏はあくまでも1弦の音が主音と言って良い。にも関わらず、2弦を主音とすることで無理やりに西洋の短音階を作ってしまっている。

このことは単に主音を変えてしまったという強引さだけに留まらず、この箏のくだりでみごとに日本音階の核となる4度(ドに対してのファ)の音程を無視しているのである。

この、4度音程が無いことに疑問を持たなかったことは後に、ヨナ抜き音階にファが無いこと、さらにはファが無いことでヨナ抜き音階が日本にマッチしないと批判を受けるに至ったことに繋がっていると思えてならないのだ。

次の記事へ⇒(四)長調への拘りと体操教育での経験

【ヨナ抜き音階と日本の音楽教育 全12記事】
(一)近代教育の開拓者 伊沢修二
(二)近代音楽教育が目指したゴール
(三)伊沢修二の実験と理屈
(四)長調への拘りと体操教育での経験
(五)たどり着いた答え『呂音階』
(六)呂音階の推進を後押しするもの
(七)集大成『小学唱歌集』に見られる拘り
(八)伊沢修二に対する批判と民謡音階
(九)伊沢修二とヨナ抜き音階が残したもの
(十)童謡『赤とんぼ』との解析
(十一)『パプリカ』の解析
(十二)そして、よなおしギターへ


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