『ヨナ抜き音階と日本の音楽教育02』

日本の近代音楽教育にとって重要な事実

ざっと伊沢修二が日本の音楽教育に携わるまでの経緯を見てきたが、ここに明治以降の日本音楽教育を左右する非常に重要な事実があると思っている。それは…

伊沢修二が音楽の専門家ではなかったことだ。

ここでの専門家とは、幼少期から日本の楽器を習うなどして日本の伝統音楽を身に付けていたか、あるいは日本の伝統音楽について研究し続けてきたかどうかということで、伊沢修二は非常に勤勉ではあったが、とくに日本の楽器や声楽などを学んで身に付けていたという記述は見当たらない。

そのため、明治12年に『音楽取調掛』が設立されその所長の役に就いた時も、米国での音楽の師匠メーソンを始め、国内の著名な作曲者や演奏家に協力を求めている。そういう意味では、取調掛での伊沢は自身も研究や作曲をしつつ同時にコーディネーター的な役割が強かったのかもしれない。

そしてその目的として当初以下の3つを挙げている。

①日本の音楽と西洋の音楽を折衷する(両者の良い所を取って1つにする)
②国楽を興じる人物の養成
③諸学校に音楽を実施し適応するか試す


何事も理念はシンプルで分かりやすい方が良い。この3つはとてもシンプルで明解、近代音楽教育のスタートとしては必要にして十分に思われる。この辺は伊沢の聡明さが垣間見えるところだ。

ただ、この中で『①日本と西洋の音楽の良い所をとって1つにする』は、その当初の目的から外れ方向性が変わっていき、最終的には違うゴールに向かってズンズン進んでいくことになる。

そしてこの方向転換こそ、伊沢修二の愚行とされ、後に「伊沢修二の推し進めた音楽教育は間違っていた」と言われる要因ともなったのだ。

しかしその結果として『ヨナ抜き音階』が生まれたといっても過言ではない。


伊沢修二が目指したゴール

『音楽取調成績申報書』というものがある。つまりこれは「研究の結果こうなったので、日本の音楽教育はこういう具合に進めていきましょう」と上層部(文部省)に報告しているもので、その内容のほとんどを伊沢修二が書いている。

この申報書を読んでみると、当初の目的とは違うところに向かって研究が進められていったことが分かる。

当初の『日本と西洋の音楽を折衷する』としていた目的は次第に『日本と西洋の音楽は同じである』という結論に向かって進められていったのだ。

音楽取調掛が設立されたのが明治12年、この申報書が公表されたのが明治17年、その間わずか5年である。当時の近代化に向けての猛烈なスピード感を考えば5年でも長いのかもしれないが…

専門家が何十年も掛けて研究してもその全貌を正確に理解するのが不可能なほど複雑な日本の音楽を、音楽を専門に学んではこなかった伊沢がその全貌を把握し、その中から良い所だけをチョイスするという至難の技をたった数年で達成できるはずはない。

恐らくこの辺は、研究していく過程で伊沢本人も気付いていたであろう。というよりもむしろ、伊沢にとっては『日本と西欧の音楽が同じ』という事実こそが必要なことだったのだ。何故なら、当初の『日本と西洋の音楽を折衷する』という途方もない計画を諦め、『日本と西洋の音楽が同じである』と新しく定義することで、西洋音楽をそのまま取り入れることは同時に日本の古からの音楽を取り入れることと同義であるとすることが出来るのだから。

つまりそれは、伊沢自身が米国留学で一所懸命に学んだ音楽を、それと同じように日本国民に学ばせればよいことになる。さらに言えば、伊沢修二が学んだ西洋での音楽の役割、国が独自の国楽を持つことの意味、それらを日本で試すチャンスとなり得るのだ。

『日本と西洋の音楽を折衷する』という聞こえの良い言葉を大義名分にし伊沢が目指したのは、精神的にも身体的にも健全な国民の育成であり、ひいては大国に肩を並べることができる近代的な国となるべく日本を統治することであった。

それこそが、日本の音楽教育に西洋音楽を取り入れる最大の目的(ゴール)なのだ。

その目的を果たすためには、何としても日本と西洋の音楽が同じであることを証明しなければならない。『音楽取調成績申報書』には、いかにも日本の音楽と西洋の音楽は同じであるという事が重ねて書いてあるのは、それを説得し何としても望む教育を実施するための手段だったのだろう。

次の記事へ⇒(三)伊沢修二の実験と理屈

【ヨナ抜き音階と日本の音楽教育 全12記事】
(一)近代教育の開拓者 伊沢修二
(二)近代音楽教育が目指したゴール
(三)伊沢修二の実験と理屈
(四)長調への拘りと体操教育での経験
(五)たどり着いた答え『呂音階』
(六)呂音階の推進を後押しするもの
(七)集大成『小学唱歌集』に見られる拘り
(八)伊沢修二に対する批判と民謡音階
(九)伊沢修二とヨナ抜き音階が残したもの
(十)童謡『赤とんぼ』の解析
(十一)『パプリカ』の解析
(十二)そして、よなおしギターへ


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