ピアニストのためのギターレッスン3

2回に渡って『ピアニストのためのギターレッスン』をご紹介してきました。

【ピアニストのためのギターレッスン】
第一回白鍵の場所を発見しよう!
第二回5ステップで伴奏が出来るようになる方法


今回は応用編ということで、ピアノ経験者がこのレッスン法を使ってどのようにギターと付き合っていけるか、について考えてみたいと思います。

目標は『ピアノの経験を活かし既存のギターリストには出来ない演奏をしよう!』です。


ギターの白鍵位置の図の応用


『ギター白鍵位置の図』を応用してピアノ経験者がどうギター演奏を発展させられるか?その可能性を見てみましょう。


【転回形を考える】

ご紹介してきたレッスンは、図を使ってピアノをイメージしながら出来るのが特徴です。

実は、このレッスンを試しに私の妻(ピアノ歴10年ほど)にやってもらったんです。

ギター経験の無い妻は、もちろん、なかなかキレイなコード(和音)を鳴らすことは出来ません。

ただ、図の上に音をマーキングしていく作業はすぐに覚え、パズルをやるように楽しくやっていました。つまり、自分が演奏したいコードをギター上に再現することが容易に、しかも楽しく出来たんですね。

そして、20分ほど取り組んだ後に言ったんです。

「これなら転回形もすぐに出来るね!」


実は、ギターリストはこの『転回形』がとても苦手なんです。

ギターリストは、コードを『形』でしか捉えていないことが多く、ピアニストには信じられないかもしれませんが...

『自分で弾いているコードが何の音で構成され、いま何の音を鳴らしているのか分からない』

なんてことが普通にあるんです。

出している音が分からなければ、それを意図的に転回することも出来ません。

逆に、ピアノは、自分の出す音を楽譜から読み取り把握することから始まりますよね。

今回ご紹介したレッスン方法なら、出す音を読み取ることから始まり、鍵盤のイメージのままギターの押さえる位置を操ることが出来るんです。

それはつまり、コードの転回形をすぐにギター上で表現できてしまうということです。

『もうちょっと高音が欲しいな』
『和音のつながりを変えたいな』
『歌いやすい和音にしたいな』

など、ピアノでアレンジできることは同じようにギター上で出来るわけです。


【ベースラインの作り方】

以前の記事『幸せなら手をたたこう』~コード譜とメロディ譜~の中でもご説明しましたが、人間は、ベースライン(一番低い音の流れ)がスムーズだと非常に気持ちよく聞こえるようです。

例えば、『幸せなら手をたたこう』のポイントとなるコード進行は以下のようになります。

A ⇒ A7 ⇒ D ⇒ Dm

このコード進行を『形』しか知らないギターリストが弾くと楽譜は以下のようになります。

AA7DDmギター-1

この演奏だとベースラインは

A(ラ) ⇒ A(ラ) ⇒ D(レ) ⇒ D(レ)

になりますね。上記のコード進行なら、ほとんどのギターリストが無意識にこのように弾くのは間違いありません。

もちろん、ギターリスト的な演奏でも何ら問題はないんです。ただ、出している音を把握できて転回形が容易に出来るピアニストなら、以下のような演奏方法も可能であることに気が付くでしょう。

AA7DDmピアノ1

こうすることで、意図的にベースラインを滑らかにすることが出来るわけです。

A(ラ) ⇒ G(ソ) ⇒F#(ファ#) ⇒ F(ファ)

そしてこの譜例を『ギターの白鍵位置の図』でマーキングしていくと、ピアノでは弾きにくいオクターブを超えるコードが、逆にギターでは弾きやすい場合があることにも気が付きます。

AA7DDmピアノ2


ギター的に『形』で演奏したコードの響きが良いのか、転回形を使ってベースを滑らかにするコードの響きが良いのか、もちろん聞き手の感性にもよるのですが...

少なくとも『複数の演奏方法を瞬時に思いつく』という点においては、ピアニストの方が圧倒的に優位に立てるわけです。

ピアニストは、幼いころから練習やレッスンに多くの時間を掛け技術や知識を身に着けている場合が多く、ギターリストよりも音楽的な優位に立っている場合が多いと感じます。

その、ご自身の優れている点を、ギターに思いっ切り活かせるのが、ピアニストのためのギターレッスンなんです。


ギターらしい伴奏の仕方


見てきたように、このレッスンではピアノの経験を最大限に活かすことができます。

その為、前回ご紹介したシンプルな楽譜なら、かなりの短期間で全曲をギターで演奏できるようになるでしょう。

ただそう言われても、レッスンに取り組み始めると、ある欲求が出てくるかもしれません。

「もっとギターっぽい弾き方を教えて~!」

はい、分かります。ギターは6本の弦をピックでかき鳴らす(ストローク)演奏が最もそれっぽくてカッコいいですよね。

でも考えてみてください。6本の弦を全部弾くということは、左手で押さえる部分が最も多い場合6カ所になるんですよ?

このレッスンを少しやって頂ければ『たった1本でも弦をしっかり押さえてキレイな音を出すのは大変』ということがお分かりいただけると思います。

もし始めから4本5本、あるいは6本全部の弦を押さえなければならなかったら…

ギターが非常に挫折率の高い楽器である理由がここにあります。


とにかく、まず曲を演奏し楽しさを体験すること。

このピアニストのためのギターレッスンは、かなりの短期間で曲を演奏することが可能です。

しかもその時、これまで培ってきたピアノの技術や知識が大いに役に立つことで、既存のギターリストをも凌駕する考え方、そうピアノ脳のままギターを演奏できるわけです。

この貴重な『ピアノ脳』を活かさない手はありませんよね?

前項で、ピアノとギターの違いを書きました。全然違うというよりも、考え方が正反対なんです。

つまり、もし始めからギターっぽい演奏方法を身に着けようとすると、全くの楽器未経験者と同じか、もしかするとそれよりも苦労する可能性すらあるわけです。

ギターっぽい演奏は、今回のレッスン方法で何曲も演奏し、ギターの構造や音の出し方を習得した後からで十分です。

このレッスンが、ピアニストが挫折することなく最も効率的にギターをマスターする方法だと、私は思っています。

そしてこれこそ『ピアノの経験を活かし既存のギターリストには出来ない演奏をする』方法です。


【ピアニストのためのギターレッスン三部】
1、白鍵の場所を発見しよう!
2、5ステップで伴奏が出来るようになる方法
3、レッスンの応用編


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