
2018年2月、『「ギブソン」が経営危機、老舗も苦しむ深刻なギター不振』という見出しの記事がDAIAMONDonlineにアップされました。
私はこの記事を読んだ時、以前目にした『最近の若者はスーパーカーではなくハイブリッド車を選ぶ』という記事を思い出しました。
私自身、いつかはフェラーリ512BB!いつかは50年代ギブソンレスポール!という感じで育っておりますので、上記のような記事には少なからずショックを受けます。
ただ、一般的に言われる『今の若者の価値観』というものも十分に理解できます。
私には高校生の息子(2000年生)がおりますが、彼は圧倒的に『燃費の良い生活』をしています。
勉強もスポーツも自分に向いていないことは極力避け、自分の好きなこともいかに効率よく楽しめるかということにエネルギーを注いでいます。
恐らく息子なら「だって、スーパーカーもレスポールも値段が高いし重たいし面倒だよ」と言うでしょう。まぁそもそも彼はフェラーリもレスポールも知らないと思いますが...
今の多くの若者は、同じ距離を移動したり同じような音を出すのなら、多くの選択肢の中から最も効率よく手がかからない方法を選択するでしょう。
それならなぜ私は、そんな非効率的なフェラーリやレスポールが欲しいのか?
それは『憧れ』以外の何物でもないのです。
つまり、ギブソンというメーカーは、ギターと同時に『憧れ』を売って成り立っていたと言っても過言ではないのかもしれません。
ですから、ギブソン社が講じたレスポールの低価格モデルの販売やオートチューナーを付けてギターを販売する行為、総合音響メーカーへの転身は逆効果だったとも言えます。
それでも、世界的にエレキギターが売れなくなっている現実があります。ギブソンだけではなく、フェンダーもPRSギターだって明日は我が身です。
何かしらの対策は必須でしょう。
一方で、アコースティックギターの老舗メーカー『マーティン社』は、今も続々と新しいモデルを発売し人気を博しています。
この差はなんだろう?
正直、私には明確な理由はわかりません。ただ1つ言えることは...
『時代を先読みし顧客のニーズに合ったものを生み出した方が勝ち』
ということ。
私のギター教室の生徒さんは、圧倒的にアコースティックギターの方が多いです。
アコギなら1人で完結します。バンドブームの時ならいざ知らず、今わざわざ人を集めバンドを運営していきたいと思う若者がどれほどいるのでしょうか?
現在は良くも悪くも『個』の時代。
バンド音楽でさえ1人で好きなように作れる時代に、面倒な人付き合いをしなくてはならないバンドはスマートではないと受け取られるのも現実です。
エレキギターがバンドで使用する楽器という位置づけである以上、このアコギとエレキギターの需要の差は仕方ないのかもしれません。
さらに考えると、ギブソン社は『ギター人口の減少』に対しての策を講じたことがあるのかということです。
確かに、廉価(れんか)モデルを出すことやオートチューナーを付けることは一見すると『ギター人口を増やすこと』につながりそうですが、それは違います。
それらの対策は単に『すでにギターを弾ける人が楽になるだけ』でしかありません。
何故なら、安いモデルでもチューニングが簡単でも、ギターそのものの弾き方は全く変わらず『未経験者にはハードルが非常に高い』からです。
ギター教室を運営していて痛感するのは、ギター未経験者は圧倒的にギターのことを知らないという事実。
これは、すごく当たり前のことですがギター業界が最も見落としがちなポイントです。
ギターを全く知らない人、あるいは、ギターに興味を持ち始めた人でさえも、ストラトとレスポールの違い、あるいは、アコギとエレキギターの違い、もっと言うなら、ベースとギターの違いが分からないのが当たり前です。
逆に言うと、それらの違いを説明できる我々の方が、圧倒的にレアな存在なんですね。
ここを間違えたままだと、ギブソン社に限らず、全てのギターメーカー、ひいてはギター業界全体が衰退していくでしょう。
橋本真也@よなおしギター開発者@yonaoshiguitar
チューリップのメロディが弾けるだけで感動する人たちがいることも知ってほしい。とにかくまずは弾いて楽しんでもらう、そうやって人とギターとの間にあった壁を取っ払っていけば、ギター人口は必ず増える。そのためのツールとノウハウがある。そして、私の周りにはギターを楽しむ人がたくさんいる。
2018/02/25 12:50:34
橋本真也@よなおしギター開発者@yonaoshiguitar
ギター業界がペグの形状一つにも拘るマニアや、100人に1人しか弾けないフレーズを弾くプレイヤーに支えられていることを知っています。でも、弦が6本あることも知らない100人にギターを弾いて楽しんでもらうことも大切だと思います。
2017/12/11 17:13:45..
き… https://t.co/RHmFOSZb60
上記のツイートがほとんど共感を得られないことに、今のギター業界の状態が表れているような気がします。
これからは、ギターの弦が6本あることも知らない100人にギターを弾いて楽しんでもらうことこそが求められていくでしょう。
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